1. Arcの特徴
Arcの特徴は、単なるCO₂排出量の集計ツールではなく、「世界の同用途建物と比較した際に、自社建物がどの程度の性能に位置しているのか」を把握できる点にあります。建物用途、気候条件、利用人数、運用時間などを加味したうえでスコアリングが行われるため、単純な原単位比較では見えにくい運用上の強み・弱みを可視化することが可能です。
Arcは、建物単体だけでなく、複数物件を横断したポートフォリオ管理にも対応しています。
J-REIT、AM会社、不動産会社、自社ビルを保有する事業会社などにおいて、運用データを起点とした意思決定支援ツールとして活用されています。
- ・ ポートフォリオ全体の環境性能比較
- ・ 低パフォーマンス物件の抽出
- ・ CAPEX優先順位付け
- ・ ネットゼロ目標に向けた進捗管理
- ・ テナント向け情報開示
- ・ GRESBやSSBJ対応
- など

Arcでは、12か月分の運用データを入力することで、エネルギー使用量、水使用量、廃棄物発生量、交通由来排出量、室内環境データなどを一元管理できます。エネルギーデータからはCO₂排出量も自動算出されるため、多くの企業で課題となっている事業所単位のデータ収集・集計業務の効率化にも寄与します。
さらに、有料プラン「Arc Essentials」では、以下のような高度分析機能も利用可能です。単なる環境データ管理に留まらない、戦略的なアセットマネジメント支援が可能です。
- ・ 世界中の類似建物とのベンチマーク比較(Peer Score)
- ・ CRREM(Carbon Risk Real Estate Monitor)との整合性分析
- ・ 建物ごとの将来的な座礁資産リスクの可視化
- ・ ニューヨークLocal Law97など海外規制への適合分析
- ・ ポートフォリオ単位での環境レポート自動生成
- ・ 環境性能改善シミュレーション
- など
また、ArcはLEED® O+M v4.1(既存建物の運用管理認証)とも強く連携しており、LEED®で求められる100点中90点分の評価にArc上の運用データを用いることが可能です。そのため、グリーンビルディングへの段階的な取り組みにも対応しています。
- ・ 既存建物のLEED®認証取得可能性評価
- ・ LEED認証取得支援
- ・ 再認証(Recertification)
- ・ Arc Performance証書やArc5証書の発行
- など

加えて、Arcを通じた取り組みは、GRESBにおける既存建物認証、エネルギー評価、テナントエンゲージメント、快適性調査、ポートフォリオ目標設定など、多数の評価項目にも活用可能です。近年のGRESBでは、単なる認証取得有無ではなく、実際の運用パフォーマンスや継続的改善がより重視される傾向にあり、Arcはその基盤となる運用データ管理プラットフォームとして活用が広がっています。
2. 株式会社Arc Japan
株式会社Arc Japanは、日本政策投資銀行、株式会社ヴォンエルフ、GBCI®との連携を背景に、日本国内でのArc活用支援を行っています。Arc導入支援、データ整理、GRESB・LEED®対応、環境性能分析、エネルギー監査、第三者検証など、建物運用データを起点としたサステナビリティ支援をワンストップで提供しています。
- 商号
- 株式会社Arc Japan
Arc Japan Inc. - 設⽴
- 2021年2⽉1⽇
- 業務内容
-
- 不動産運用とESGパフォーマンスを測定するためのプラットフォーム(Arc)の普及促進。
- 不動産業務とESGに関連するデータを集約・分析・処理し、蓄積されたデータベースに基づいたベンチマーキング情報の提供とそれらに関連するサービスの提供。
3. Arcのアップデートについて
近年Arcは大きなアップデートが行われており、従来のArcとは思想・位置づけそのものが変化しつつあります。
これまでのArc(いわゆるLegacy Arc)は、主にLEED® O+M v4.1と強く連携した「既存建物の運用データ入力・Performance
Score算出プラットフォーム」として活用されてきました。Energy・Water・Waste・Transportation・Human
Experienceという5つのKPIをもとに、世界中の建物データと比較しながらArc Performance Scoreを算出し、LEED® O+M
v4.1やArc証書発行へ活用することが主な目的でした。
一方で、LEED®
v5の登場に伴い、USGBC®/GBCI®はArcプラットフォーム自体を大幅に再設計しています。新しいArcは、単なる既存建物向けの運用スコア管理ツールではなく、従来のArc・LEED®
Online・各種GBCI®ツール群を統合していく次世代プラットフォームとして位置づけられています。
従来、LEED® BD+CやID+Cなどの認証申請は「LEED® Online」上で行われていましたが、LEED®
v5では新Arc上でプロジェクト登録、クレジットフォーム確認、資料アップロード、レビュー申請などを実施する構成へ移行し始めています。実際にLEED®
v5プロジェクトはArc上で登録・申請を行う仕様となっており、今後段階的にLEED® Online機能も新Arcへ統合されていく方向性が示されています。
この背景には、LEED® v5において「認証取得時点だけでなく、その後の継続的運用改善や実パフォーマンス管理を重視する」という思想が強く反映されていることがあります。LEED®
v5では、従来以上に脱炭素・レジリエンス・運用データ管理・継続的コミッショニング・利用者エンゲージメントなどが重要視されるようになっており、Arcもそれに合わせて、“認証申請システム”と“運用パフォーマンス管理プラットフォーム”を一体化する方向へ進化しています。
そのため、新Arcでは、従来のArc Performance Score管理に加え、LEED®
v5申請管理、ポートフォリオ横断分析、脱炭素ロードマップ管理、ESGデータ統合、改善アクション管理、外部データ/API連携など、より包括的な不動産ESGマネジメント機能が強化されています。つまり、従来Arcが「LEED®
O+M
v4.1向け運用スコアリングツール」であったのに対し、新Arcは「LEED認証・運用改善・脱炭素・ポートフォリオESG戦略を統合管理するプラットフォーム」へと進化している点が、最も大きな違いといえます。
